キエサルヒマ内戦(キエサルヒマないせん)は、キエサルヒマ大陸で起こった戦争。
概要
ドラゴン種族の聖域を中心に発生したアイルマンカー結界の崩壊に絡む一連の事件を発端とする、貴族連盟と大陸魔術士同盟の対立を主軸とした内戦。タフレム市を始めとする独立自治性の高い辺境都市の台頭による現支配体制の崩壊を恐れた貴族連盟は、各都市に対して武力による牽制・弾圧を行い、やがて大規模な武力衝突へと発展した。
発端
アイルマンカー結界の崩壊後、貴族連盟はオーフェンを「遺産の無断使用」および「聖域の破壊」について王権反逆罪を適用し告発し、《十三使徒》の首長プルートーも独断で《十三使徒》を扇動した罪で同罪を言い渡された。これらの判決を不服としたプルートーはタフレムの《牙の塔》に逃げ込み、連盟に対して徹底抗戦の構えを見せた。また大陸魔術士同盟も、先立って起こったダミアン・ルーウによるフォルテ・パッキンガム襲撃事件を貴族連盟が企てた謀殺未遂と見なしていたため、この判決で王都に対する反抗姿勢をさらに強めることとなり、プルートーを擁護する立場を取った。
推移
《牙の塔》に入ったプルートーは大陸魔術士同盟を貴族連盟に対抗する組織へと再編成した上で、全大陸の魔術士に対し《塔》への召集を呼びかけ、勢力の増強を図った。これを受けて貴族連盟は、《十三使徒》の反乱が魔術士同盟の支援を受けた組織的な計画であったと断定し、魔術士同盟そのものに王権反逆の嫌疑をかけた。
キムラック崩壊~開戦
貴族連盟は蜂起が発生していたキムラック市に暴動の鎮圧という名目で騎士軍を派遣したが、その実態はキムラック教会に「魔術士同盟の反逆への加担」という有りもしない罪を擦り付けた上での教会幹部の虐殺だった。騎士軍はキムラック市を大崩壊へと追いやると、占拠した市街をタフレムに対する砦として収奪。タフレムとキムラックの間に戦端が開かれた。
各都市の反応
争乱の影響は大陸全土に波及し、各都市はその対応を迫られた。
- アーバンラマ
- 混乱状態に陥ったキエサルヒマに見切りをつけた一部の資本家は、オーフェンが主導する外大陸開拓計画を支援し、その間、アーバンラマ市議会は貴族連盟の介入を防ぐため街門の完全封鎖を決定した。議会ではタフレムを支援して王都包囲網を展開すべしと唱える議案も提出されたが、終戦後の勢力図次第で開拓計画が有力な外交カードになることを見越し、紛争中は終始中立の立場を取り続けた。
- トトカンタ
- 魔術士同盟と貴族連盟の対立が本格化するのに先立ち、貴族連盟は騎士軍を動員してトトカンタ港湾を襲撃・破壊し、トトカンタを拠点とする航路を断った。大陸魔術士同盟トトカンタ支部長ハーティア・アーレンフォードは、プルートーが発した召集令を横目に、精鋭の魔術士を手元に残すことで独自の戦力を組織した。
トトカンタ防衛戦
マスマテュリアの氷解に伴い大陸南部の陸路が開通すると、貴族連盟は戦いを一気に決着させるため、タフレムに南北から挟撃を仕掛ける形で軍を進めた。しかし、魔術士同盟に協調したトトカンタ市は市を挙げて貴族連盟に反攻し、騎士軍の侵入を阻んだ。トトカンタの激しい抵抗によって騎士軍は思わぬ足止めを食らうこととなり、戦いは膠着状態に突入した。
この戦いで、ハーティアの指揮下で人間離れした戦功を上げたマジクは、かつてのトトカンタの裏の支配者である母に倣って「ブラディ・バース」とあだ名された。また、この戦争においてハーティアは市行政にも顔を利かせながら巧妙に立ち回り、後に巨額の利を得たと言われている。
詳細は「トトカンタ防衛戦」を参照
貴族連盟の内紛
激変する情勢の中で、王立治安構想の維持はもはや不可能と判断した貴族連盟のヒクトリア・アードヴァンクルは、同じく貴族のジェイコブズ・マクトーンと共謀し、王立治安構想と貴族連盟の解体へと動いた。元々、魔術士と貴族の協調路線に関わってきた歴史を持つアードヴァンクル家は、そのルートを頼りにタフレムと停戦に向けた協議を進め、両勢力の対立から約3年後、貴族連盟と大陸魔術士同盟は和議を結び、戦争はタフレムと貴族連盟の決戦を待たずに終わりを告げた。
終戦
戦後調停の結果、内戦の発端となったプルートーとオーフェンに対する罪状は条件付きで取り下げられた。
トトカンタ防衛戦で大役を果たした大陸魔術士同盟トトカンタ支部は、市民感情を背景に同盟本部からの独立を宣言し、トトカンタ魔術士同盟が設立された。
王立治安構想は解体へ向かい、その根幹を成していた騎士団(派遣警察および騎士軍)は別の治安組織として再編成される事になった。また貴族連盟自体も貴族共産会へと名を変え、王都メベレンストは大都に改められた。