概要
市の中心にそびえ立つ巨大な白亜の塔。200年以上前、天人司祭イスターシバによって建造された。塔が完成した際、イスターシバが人間たちに対して「世界に疑問を持ったならばのぞけ」と語ったことにちなみ、世界図塔と名付けられた。
巨大な一枚岩から掘り出されたものらしく、窓に類するものは一切無く、入り口はひとつだけ。塔の外壁が天頂部に上るほど鋭角に湾曲しており、その外観がまるで尖った動物の牙のような形状を成していることから「牙の塔」(きばのとう)とも呼ばれ、やがてそれがタフレム市の愛称となり、さらに後には黒魔術の最高峰として世に知られることになる魔術士養成学校《牙の塔》の正式な名称にも採用されている。
キムラック教会が提唱し貴族連盟の合意を受けて発布された「女神の命令」の有効圏内に入っているため、塔内部への人間の立ち入りは厳重に禁じられている。現在は《牙の塔》の魔術士が入り口を常に監視している。
世界書の召喚
キエサルヒマ大陸最大級の遺跡であるこの塔が建造された目的は、魔王スウェーデンボリーの召喚である。世界図塔はそれ自体が一個の召喚機として機能し、アイルマンカー結界によって断絶されたキエサルヒマ大陸と外界を繋ぐ接点となった。
イスターシバはまず、スウェーデンボリーが著した歴史書『世界書』の召喚を試みた。たった1冊の本の召喚においても、多くの天人が持てる全ての魔力を結集させる必要があったとされ、また召喚の儀を行なってから実際に世界書が大陸に現出するまで、何十年という時を経なければならなかった。この書は、キエサルヒマ大陸の終局を予見したイスターシバが、その時大陸の命運を担うであろう次代の魔術士たちのために用意したものと言われている[1]。召喚術は装置にかかる負担が大きかったらしく、世界図塔は『世界書』の召喚後に故障し、使えなくなってしまった。
砂の戦争
約40年前、《牙の塔》の最高執行部がキムラック教会の意向を無視して世界図塔の調査を強行したことがきっかけとなり、魔術士(タフレム)とキムラック教会の間で大きな戦争が勃発した。これは後に砂の戦争と呼ばれる。