大陸魔術士同盟
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大陸魔術士同盟(たいりくまじゅつしどうめい、ダムズルズ・オリザンズ)は、キエサルヒマ大陸の魔術士による互助組織である。
目次
概要
キエサルヒマ大陸における魔術士の一大勢力。大陸の各都市に支部を構え、タフレムの《牙の塔》が同盟の総本山的存在となっている。半円形の盾の中心に祈りを捧げる女性の横顔を配した意匠を紋章としている。
キエサルヒマ大陸に生きる全ての魔術士は、魔術を会得した過程を問わず、同盟への帰属を表明することでその庇護を受けることができる。同盟の評議員の一人であるプルートー曰く、魔術士同盟とは魔術士の精神そのものであり、魔術士は生まれてより死ぬまで永久に同盟員であると言う[1]。同盟への帰属は魔術士の責務であり、これに抗する魔術士は「未登録魔術士」(いわゆるモグリ)として扱われ、魔術士としての公的な職に就くことはできない。
後の新大陸の発見と入植に伴い、名称がキエサルヒマ魔術士同盟と改められた。また、開拓計画の第一人者であるオーフェン・フィンランディと協約を結び、現地における魔術士の保護を全面的に委託している。
歴史
およそ200年前の「魔術士狩り」の戦乱の後、魔術士たちはドラゴン信仰者やキムラック教徒から偏見や畏怖、憎悪の対象となり、以後長きに渡って激しい迫害を受けることになった。厳しい苦難の時代の中で、魔術士たちは自らの生存権を守るために結束し、互いに助け合うことで危機を耐え忍んだ。彼らは、魔術という武力に頼るのではなく、団結による組織の力でもって、人間社会における魔術士の正当な地位を主張し続けた結果、今日の魔術士が生きる社会基盤と環境を築きあげた。これが魔術士同盟の始まりであり、現在まで受け継がれる同盟の根源的理念である「互助」の精神に繋がっている。同盟の結成後、魔術士は貴族連盟の庇護を受けながら、徐々にキエサルヒマでの人権を回復させていった。
《十三使徒》の結成
《牙の塔》は貴族連盟による支援の見返りとして多くの魔術士を王都へ供出した。しかし、かねてから《塔》だけが魔術士社会のトップとして君臨し続けている状態に懸念を抱くものも少なくなく、貴族連盟は直属の魔術士団を組織し始める。この流れの中で誕生したのが宮廷魔術士団《十三使徒》であり、貴族主導による魔術士養成学校「スクール」であった。
スクールは王都へ渡った《塔》出身の魔術士が教師となり、古い伝統を排した学校作りを目指した。やがて、スクール出身の大魔術士プルートーが《十三使徒》の長として君臨するとその地位は盤石なものとなり、逆に《塔》は最高峰としての地位を脅かされる事となった。この事態を憂慮した《塔》執行部は当時フリーの暗殺者として活躍していた大魔術士チャイルドマンを招聘、選び抜かれた七人の生徒にエリート教育を施す「チャイルドマン教室」結成を指示した。
内戦時代(前期)
アイルマンカー結界の消滅後、キエサルヒマの情勢が不安定化するに伴って水面下で対立状態にあった貴族連盟との関係が悪化し始める。それに先立ち、《塔》の有力者であるフォルテ・パッキンガムを狙い最接近領直属の白魔術士ダミアン・ルーウが襲撃したという事件があり、その関与を糾そうとした矢先にプルートー率いる《十三使徒》の生き残りが亡命してきた。
貴族連盟は魔王術を得て結界を破壊したオーフェンを「遺産の無断使用」および「聖域の破壊」について王権反逆罪を適用して告発し、プルートー及び《十三使徒》メンバー全員も同罪とした。これらの判決を不服としたプルートーはタフレムに逃げ込み、連盟に対して徹底抗戦の構えを見せた。受け入れ先となった《塔》も、先の襲撃事件を貴族連盟が企てた謀殺未遂と見なしていたため、この判決で王都に対する反抗姿勢をさらに強めることとなり、プルートーを擁護する立場を取った。これを受けて貴族連盟は、《十三使徒》の反乱が魔術士同盟の支援を受けた組織的な計画であったと断定し、魔術士同盟そのものに王権反逆の嫌疑をかけた。
詳細は「キエサルヒマ内戦」を参照
内戦時代(後期)
《塔》に入ったプルートーは大陸魔術士同盟を貴族連盟に対抗する組織へと再編成した上で、全大陸の魔術士に対し《塔》への召集を呼びかけ、勢力の増強を図った。その一方でトトカンタ支部長に就任したハーティア・アーレンフォードは独自の戦力を組織し、想定されうる事態に備え始める。
ウォー・ドラゴンの絶滅によってマスマテュリアが氷解すると、貴族連盟は南ルートからの進軍を開始、トトカンタを主戦場とする大規模な防衛戦が勃発する。
詳細は「トトカンタ防衛戦」を参照
この戦いで両軍は疲弊し膠着状態に陥る。両勢力の対立から約3年後、貴族連盟と大陸魔術士同盟は和議を結び、戦争はタフレムと貴族連盟の決戦を待たずに終わりを告げた。
内戦終結後
戦後調停の結果、内戦の発端となったプルートーとオーフェンに対する罪状は条件付きで取り下げられた。トトカンタ防衛戦で大役を果たした大陸魔術士同盟トトカンタ支部は、市民感情を背景に同盟本部からの独立を宣言し、トトカンタ魔術士同盟が設立された。
原大陸への航路が確立すると、多くの魔術士が海を渡った。
詳細は「遅れてきた開拓団」を参照
原大陸開拓時代
原大陸における魔術士の入植は反魔術士感情の根強いキムラック人が多数を占める先発開拓団の了承を得ないまま進められたため、後世に深い禍根を残す軋轢を生んだ。開拓計画の第一人者となった《魔王》オーフェン・フィンランディが監督役となる事で一応は人権が認められるが、行動には逐一制限が課せられる事になる。
魔術士の入植から約10年後、スウェーデンボリー魔術学校の開校に伴って魔術士同盟は協約を結び、現地における魔術士の保護を正式に委託した。
新シリーズ
20年ぶりに帰郷したオーフェン・フィンランディによる演説がきっかけとなり、《塔》の次代を担うマヨール・マクレディが外交特使として海を渡る。原大陸において魔王オーフェンから魔王術の実在を明かされ、ケシオン(スウェーデンボリー)が秘術を伝授すべく海を渡った。
その3年後、キエサルヒマにおいてヴァンパイアの取り締まりが強化されると違法に海を渡るものが続出し、その捜査のためにマヨールが再び特使に任命される。原大陸に渡った直後に、貴族連盟が秘密裏に組織したリベレーターによるクーデターが勃発、その渦中に巻き込まれる。動乱終結後も半年に渡って滞在し、紛争解決に貢献した。
原大陸で起きた一連の戦乱は同盟にとっても対岸の火事では済まされず、特に魔王術を漏洩したケシオンの監視を怠った責任としてフォルテ・パッキンガム、レティシャ・マクレディ夫妻は幹部職を辞任しなければならない事態となった。加えて、原大陸における大敗北で損害を被った貴族共産会が今後どのような動きを見せるか予断を許さず、新生《十三使徒》ことメベレンスト支部は対応に追われている。
主な活動
- 魔術士の地位水準の確保
- 職業の斡旋
- 大陸地図の発行
支部
タフレム
タフレム市は「魔術士の街」と呼ばれるほど多くの魔術士が住んでおり、魔術士にとって最も環境の優れた街といえる。また郊外には大陸黒魔術の最高峰と呼び名の高い《牙の塔》が所在する。
トトカンタ
商業都市らしくリベラルで風通しの良い街で、魔術士の地位も非常に高く、タフレム、メベレンストに次いで魔術士が暮らしやすい街と言われる。
支部には生活環境向上委員会にハーティアが勤務し、部下にラシィ・クルティ、ミース・シルバーがいる。
キエサルヒマ内戦時にハーティアが支部長に就任し、トトカンタ防衛戦では騎士軍との戦いの中核を担った。終戦後は独立して「トトカンタ魔術士同盟」となった。
詳細は「トトカンタ魔術士同盟」を参照
アレンハタム
ドラゴン信仰の本拠地であるため、支部の活動は困難を極める。支部の建物は廃校となった小学校の引き払い物。
バジリコック砦跡に眠っていた天人種族の遺産「殺人人形」(キリング・ドール)が覚醒し、同盟職員はステファニーを残して全滅。ステファニーも事件後に街を離れ、事実上アレンハタム支部は壊滅した。
アーバンラマ
支部は市の北側に所在。
ライアン・スプーンが起こした動乱の際には、市軍と協力し市民の避難誘導を行った。
メべレンスト
貴族に仕える魔術士の軍隊である宮廷魔術士《十三使徒》が設置されている。その《十三使徒》の長であるプルートーを輩出した魔術士養成機関「スクール」は、一時期は《牙の塔》に迫る勢いを見せたが、聖域での事件後のプルートーの失墜と《十三使徒》の壊滅により衰退を辿る。
第四部では、元・十三使徒のマリア・フウォン教師がメベレンストと貴族共産会の監視を目的に、メベレンスト支部設立のための活動を行っている。周囲からは新生《十三使徒》と呼ばれ、半ば定着しつつある。
評議員
備考
- 同盟の通称である「ダムズルズ・オリザンズ」は「古乙女の祈り」を意味し、同盟の紋章が表す「祈祷する乙女の横顔」に由来する。
- 同盟職員は司書官と呼ばれる。制服のカラーは赤と黒を基調とし、マントには大きな星型の装飾が付いている。
脚注
- ^ ただし、その事に内心反発を抱く魔術士も少なくなく、支部間の意識の違いも珍しくない。