最接近領(さいせっきんりょう)とは、キエサルヒマ大陸東部、フェンリルの森東の荒野に点在する、貴族連盟の特別統治領。領主はアルマゲスト・ベティスリーサ。
概要
人間種族にとって聖域に最も近い場所であることから「最接近」領と呼ばれる。キエサルヒマ大陸において聖域のドラゴン種族と抗争を続ける唯一の砦であり、貴族連盟の切り札として残されている秘密勢力である。
領内には、領主であるアルマゲストとその側近たちが居住する屋敷と、その裏手には領主の警護にあたる非公式騎士たちの兵士宿舎がある。そして、それらを中心として取り囲むように広大な庭園が広がっている。また、庭園の入り口となる門には、蛇の中庭をモチーフとした意匠があしらってある。
領主の屋敷そのものは、約200年前にフェンリルの森の畔に建てられた古いもので、本来は聖域と人間種族との間の友好を取り計らうことを職務とした「親善大使」が住まう館だった。しかし、200年の間に森は後退し、さらに聖域が外界を裏切りつつあることに気づいた現在の領主(アルマゲスト)によって、その役割も対聖域の戦砦へと変わった。
最接近領は制度上は騎士軍の末端組織に位置付けられるが、その存在はいかなる公的な記録からも抹消され、貴族連盟の王立治安構想からも独立している。また、白魔術士ダミアン・ルーウによって、ネットワークに対してもその存在を欺瞞するための干渉が常に行われており、組織の素性を隠蔽しながら聖域と暗闘を行っていた。
最接近領の戦い
王都の宮廷魔術士《十三使徒》の長プルートーと《霧の滝》の白魔術士たちは、最接近領の聖域に対する攻撃が、いずれ大陸全てを巻き込む新たな戦争の引き金となる可能性を危惧し、《十三使徒》の手勢から領主アルマゲストの暗殺を図った暗殺技能者(スタッバー)を幾度も派遣していた。そのため本拠地の所在を悟られないよう、僻地で暴れている武装盗賊団を囮に攪乱を図ったこともある。
再三の失敗により後が無くなったプルートーは、《十三使徒》最高のスタッバーであるシーク・マリスクの投入を決定した。また同じ頃、聖域も最接近領の存在を特定し、ドッペル・イクスの暗殺者ジャック・フリズビーを送り込んだ。さらに、奇しくもダミアン・ルーウに招かれたオーフェン一行の到着までもが同時刻に重なってしまい、最接近領は未曾有の戦場と化した。この一夜の戦いにおいて、派遣された《十三使徒》および最接近領の私兵は全滅を喫した。
翌日、最接近領の最後の要であったダミアン・ルーウがオーフェンとアザリーによって倒され、さらにコルゴンが最接近領からの離反を表明したことで、アルマゲストは全ての手勢を失うこととなり、事実上最接近領は滅びた。
聖域崩壊後
最接近領は存在もその活動も極秘事項としていたため、貴族連盟にとっては王立治安構想の急所にもなりうる代物であった。ゆえに、貴族連盟は聖域の存在とドラゴン種族の企てを公表し、正当化を図るしかなかった。しかし、オーフェンと《十三使徒》に責任を擦り付けるような貴族連盟のやり方にプルートーが激怒し、大陸魔術士同盟に加えてかねてから独立を狙っていたトトカンタやアーバンラマもこれに便乗し、キエサルヒマ内戦の引き金となった。