概要
王都メベレンストの有力貴族10家ほどで構成され、キエサルヒマ大陸人間領の統治を行う中央政府としての役割を持っている。騎士団(騎士軍や派遣警察など)、宮廷魔術士《十三使徒》、白魔術士の要塞《霧の滝》といった強大な武力組織を擁し、大陸全土にその支配力を及ぼしている。貴族内革命以前は王が連盟の代表(盟主)を兼任していたが、革命後は連盟に加盟する各家が一定期間ごとに持ち回りで代表を担うことになっている。
貴族連盟は人間種族の代表として、300年前のキエサルヒマ大陸入植以来続いてきた被天人支配からの脱却を訴え、それに代わる人間種族主導の下の大陸統治を掲げている。そして、その妨げとなる可能性を孕んだ大陸魔術士同盟やキムラック教会、ドラゴン信仰者といった大勢力を危険視し、水面下で対立状態にある。かつての大陸の支配者であるドラゴン種族の聖域に対しては、王立治安構想から切り離された独立勢力「最接近領」を切り札として有している。
王立治安構想
天人種族から王権を継承し大陸を治める者の義務として、貴族連盟は大陸の平和と安全を恒久的に維持するための統治計画「王立治安構想」を打ち立てた。これは大陸の全人民に対して貴族連盟への恭順を強いる法であり、反抗する者は容赦なく王権への反逆(王権反逆罪)と見なし徹底的に処断するという強硬な姿勢を取っている。そのため、反体制を訴えて連盟の法から逸脱する主義者も少なくないという。
詳細は「王立治安構想」を参照
遺産相続
貴族連盟は王権の継承と同時に天人種族が生前に遺したあらゆる財産の相続をも主張しており、大陸のあちこちに放棄された天人種族の遺産および天人種族の遺跡についてもその所有権を訴えている。遺産の隠匿や無断使用だけでなく、遺跡への不法侵入なども貴族連盟ひいては王権に対する叛意と見なされ、王権反逆罪が適用されている。
歴史
貴族連盟の設立
魔術士狩りの発端となった戦争の末期、衰退を窮めた天人種族が聖域へ隠遁し、キエサルヒマ大陸が無政府状態になると、当時天人の寵愛を特に受けていたアレンハタムの王族と一部の有力貴族たちはドラゴン種族の正当なる後継者を名乗り、アレンハタムを捨てて東部に移り、メベレンスト市の建造と遷都を行った。貴族連盟が設立されたのはこの頃である。
王権の簒奪
メベレンスト市への遷都から間もなく、貴族たちは革命(貴族内革命)を起こし、王家を滅亡へと追いやった。旧来の王を頂点とした統治体制の撤廃に成功すると、貴族連盟は王室が掲げていた大陸の統治権限である王権の継承を宣言。貴族の連帯合議制による新たな政治体制を樹立し、王立治安構想を提唱した。これ以降、権威としての王室は残される一方で、その実権は貴族連盟に掌握されることとなった。[1]
王立治安構想の衰退
貴族連盟が王権を握って約200年、表向きはリベラルに統治してきたが、赤光帝37年頃になるとその支配に陰りが見え始める。西部ではトトカンタ市やタフレム市などが自治性を強めるにつれ、各都市の自治範囲を超えて犯罪を取り締まる派遣警察は次第に各都市を監視する諜報組織としての顔を見せ始める。かつてはキエサルヒマで最初に自治を宣言したアーバンラマ市を王権反逆の嫌疑をかけた事もあった。
かつては貴族連盟のみが独占していた拳銃の製造と研究も、《牙の塔》やキムラック教会でも秘密裏に行われるようになった。やがてチャイルドマンの考案によって技術革新が進み、狙撃拳銃が発明された。その技術は貴族連盟にリークされるが、後の内戦で相当数が製造されたために全国に普及、完全なる独占は事実上不可能となった。
キムラック市の最奥部において、天人種族の始祖魔術士オーリオウルが女神を押し留めていられるのも限界が来ようとしていた。それに呼応し、聖域も不穏な動きを見せ始め、最接近領との間で熾烈な暗闘が繰り広げられるようになる。これらの動きはいずれ大陸全てを巻き込む新たな戦争の引き金となる可能性を危惧した宮廷魔術士《十三使徒》の長プルートーと《霧の滝》の白魔術士たちは、貴族連盟に内密で最接近領の実態を探るべく何度も刺客を送り込んだ。
王立治安構想の崩壊
赤光帝47年頃、聖域における戦いの末に生じたアイルマンカー結界の崩壊事件は、王立治安構想を揺るがした。貴族連盟はこの事件に深く関わったオーフェンとプルートーを王権反逆の罪を着せ、プルートーはそれを不服として《牙の塔》に逃げ込むと大陸魔術士同盟も王権反逆罪の嫌疑をかけた。
その一方で、キムラック教会に混乱が生じるとそれを利用し、あらぬ嫌疑をかけて指導層を虐殺、キムラック市を占拠した(キムラック崩壊)。それら一連の動きは、アーバンラマ市の資本家達による外大陸開拓計画、トトカンタ市の貴族連盟からの離脱、キエサルヒマ内戦勃発という事態をもたらした。
魔術士同盟の総本部であるタフレム市を目標に定めた貴族連盟は、マスマテュリアの氷解に伴って南ルートからの進軍が可能になると、タフレムを守る要害となっていたトトカンタを攻撃した。後にキエサルヒマ内戦最大の戦いと呼ばれるトトカンタ防衛戦によって予想外の大打撃を受けた貴族連盟は、数年に渡る膠着の末に、魔術士同盟と和議を結んで停戦した。その後、貴族連盟は「貴族共産会」と改名し、王立治安構想は解体を余儀なくされた。[2]
リベレーター結成
王立治安構想を放棄した貴族共産会はタフレムやトトカンタにもある程度の自治権を与えつつ新体制に移行したと思われる。しかし、一部の貴族には王立治安構想を復活させたいと密かに画策するものもいて、放棄された聖域の発掘を秘密裏に推し進める。回収された資料の中にはクリーチャー技術のデータもあり、リベレーター結成の契機となった。その後、クリーチャー技術は秘密裏に研究が進められ、原大陸から渡ってきた魔王スウェーデンボリーによって技術革新が進み、実用化へとこぎ付けた。
原大陸乗っ取り計画
王立治安構想の復活を目論む貴族共産会は、来るべき日に備えて準備を推し進めてきた。原大陸においては開拓公社を派遣し、開拓事業によって資金を確保とすると同時に足がかりを整え、先発開拓団の了承を得ずに魔術士の入植を許すことで元キムラック人との間に溝を作らせ、乗っ取りが上手く行きやすい状況を作り上げた。戦術騎士団がシマス・ヴァンパイアによる壊滅災害で痛手を受けたところを突いて計画を実行に移した。
しかし、幾度に渡る壊滅災害を乗り越え、その都度政治の再編を繰り返してきた原大陸の体制は一筋縄ではいかず、体制の暗部を糾弾するために今まで秘匿されていた魔王術を公表させるも、逆に不当な立場を強いられてきた魔術士に復権の機会を与える結果となってしまった。母船ガンズ・オブ・リベラルを落とされ、総大将のヒクトリア・アードヴァンクルとジェイコブズ・マクトーンを失ったリベレーターは完膚なきまでに叩き潰される。この戦いの末に貴族共産会は原大陸における足がかりをすべて奪われ、開拓公社も全面撤退しなければならなくなった。
原大陸大戦以降
原大陸における敗戦で貴族共産会は大きな打撃を受け、存続の危機に瀕しようとしていた。マヨールが帰国の途についている時点では表立った動きはないが、近い将来に何らかの形で燃焼することは間違いなく、新生《十三使徒》はその対応に追われている。