キエサルヒマ大陸
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キエサルヒマ大陸(キエサルヒマたいりく)は、蛇の中庭にある大陸または島。キエサルヒマ島(キエサルヒマとう)とも呼ばれる。
概要[編集]
『魔術士オーフェンはぐれ旅』第一部・第二部の舞台。「唯一の真なるドラゴン」ウロボロスが巻く“とぐろ”の中に創造された世界「蛇の中庭」に浮かぶ無数の島の一つと伝えられる。
古くは、主に地人種族(当時の「人間種族」)が棲息する土地であったが、約1000年前に巨人の大陸から渡来したドラゴン種族の入植に伴って地人種族は大陸の隅へと追いやられ、やがてドラゴン種族(主に天人種族)によって統治される国家が築かれた。
その後、ドラゴン種族を追って襲来した女神との戦争や、外大陸から漂着した人間種族(当時の「巨人種族」)の入植を経て、約200年前、衰退した天人種族が歴史の表舞台から姿を消すと、貴族が起こした革命により旧来の王家が滅ぼされ、王立治安構想を提唱する貴族連盟を政府とする人間種族主体の社会が形成された。
地理[編集]
キエサルヒマ大陸の全面積は、現実の世界と比較すると概ねオーストラリア大陸と同程度[2]か、もしくはその半分程度[3]に近似すると推定されている。また、1000年以上前の蛇の中庭の全容を知る始祖魔術士は、キエサルヒマ大陸は世界全土と比較すれば大陸とは名ばかりの小島に過ぎないとも語っている。
大陸は大きく分けると、東部と西部、さらに南部「マスマテュリア」、北部「ゲイト・ロック」、中央部「フェンリルの森」の5地域に区分される。フェンリルの森は大陸面積の20パーセント以上を占める広大な森林で、ディープ・ドラゴン種族が森を守護するかのように跋扈している。その北方に位置するゲイト・ロックはキムラック教会の管理下にある黄砂地帯、また南方のマスマテュリアは地人種族が棲家とする極寒の氷雪地帯と、一般の民間人にとっては居住はおろか通行すら困難な地域が縦に連なっており、大陸の東西が分断される形となっている。そのため、東部・西部間の交通には海路を使うのが一般的である。主だった都市は沿岸部に集中しており、市街地を離れると街々を繋ぐ街道の外は大部分が荒野で、開発の手が一切入っていない未開地域も未だ多く残っている。
かつては大陸北部を走るレジボーン山脈一帯が火山帯として活動していたことが文献に残されているが、ドラゴン種族の入植後、天人種族の魔術によって「鎮火」されたという。
外洋[編集]
ドラゴン種族がキエサルヒマ大陸に渡来した際、始祖魔術士が展開した大陸全土を覆う対女神防壁「アイルマンカー結界」によって、大陸は外世界との関わりを完全に断絶され、絶海の孤島と化した。このため大陸外洋の状況を知る方法は一切失われ、唯一の手がかりである結界の隙間から吹きつける外世界の「死んだ砂」(黄塵)からその様子を推し測ることしかできなかった。
キエサルヒマ大陸が人間種族の社会へと移り変わって以降も、伝承に見られるような外大陸の存在が確認されたことはなかった。人間種族の祖先も外界から海を渡ってキエサルヒマ大陸に流れ着いたとされているが、現在の人間種族に外洋を渡る航海術はほとんど残っておらず、近海から離れすぎたために消息を断つ船があとを絶たなかった。
現代、オーフェンが召喚されたスウェーデンボリーの力を行使してアイルマンカー結界を撤廃したことで、キエサルヒマ大陸は再びその姿を全世界に晒け出すこととなった。情勢不安に陥ったキエサルヒマに見切りをつけたアーバンラマの資本家たちは、新天地の発見と移住を目指して立案された「外大陸開拓計画」に出資を行い、その支援を受けて人類史上初の外洋航海に挑んだ開拓団は、後に新大陸(原大陸)の発見に成功した。
気候[編集]
春夏秋冬の概念は存在するものの、一年を通して気温の変化はあまり無く、最低気温15度、最高気温27度くらいの比較的温暖な気候であるとされる[4]。また「四季の無い国」とも書かれている[5]。
一方で、南部のマスマテュリア地方一帯は、棲息するウォー・ドラゴン種族が常時体外に放出していた冷気のため、年間を通じて極寒地帯となっていた。しかし、アイルマンカー結界の消滅から約1年後、なんらかの理由で氷解した。
主な都市[編集]
歴史[編集]
1000年前~
- 現出した神々の滅びから逃れてきたドラゴン種族たちがキエサルヒマ大陸に上陸。大陸の中央部に聖域を建造し、始祖魔術士がアイルマンカー結界を張る。
- 銀月姫率いる地人種族の反ドラゴン種族派による武力蜂起が勃発。(地人戦争)
- 女神ヴェルザンディに遣わされた最初の魔獣バジリコックを撃退。(バジリコック砦の戦い)
- 戦後、砦となった地に最初の都市アレンハタムが築かれる。
- キエサルヒマ王国の成立。
約300年前~
- 人間種族(当時の巨人種族)が外洋から漂着する。
- 女神ヴェルザンディがアイルマンカー結界を突破。ドラゴン種族と女神の決戦が始まる。
- 天人種族の始祖魔術士オーリオウルが身を賭して女神を結界の外へ押し戻し、戦いは一時の終結を見る。(ラグナロク砦の戦い)
- 戦禍を被り全てを失った人間種族が、天人種族の庇護の下に新たな文明を築き始める。
約200年前~
- 天人種族と人間種族の間で混血が起こる。人間種族の魔術士の誕生。
- ラモニロックがラグナロク砦跡にユグドラシル神殿を建立。キムラック教会の創始。
- 天人種族と人間種族の魔術士の間で戦争が起こる。「魔術士狩り」時代の到来。
- ラモニロックが「魔術士の全処刑」を宣言。
- 大陸魔術士同盟が成立する。
- 衰退を窮めた天人種族が聖域へと隠遁。大陸は統治者不在の状態に。
- 人間種族の王族と貴族が天人庇護からの脱却と独立を訴え、人間種族の主導による大陸統治を宣言。
- 東部に新たな王都メベレンストが築かれ、遷都が行われる。(メベレンスト遷都)
- 貴族の反乱により王家が滅亡。貴族連盟が成立する。(貴族内革命)
約40年前
現代
- アイルマンカー結界の縮小計画をめぐって聖域で内紛が起こり、最接近領も聖域と抗争を始める。
- アイルマンカー結界が消滅。女神が大陸から去る。
- キムラック市で大蜂起が勃発。騎士軍の介入により市は壊滅状態に。(キムラック崩壊)
- 貴族連盟と大陸魔術士同盟の対立が激化し、やがて全土を巻き込む内乱に発展する。(キエサルヒマ内戦)
- アーバンラマの一部の資本家とキムラック難民による外大陸への移民が始まる。(外大陸開拓計画)
- 内戦が終結。貴族連盟は王立治安構想を放棄し、貴族共産会に改称。
20年後
詳細は「オーフェン史年表」を参照
政治[編集]
かつては王室の国王を頂点とする王政が布かれていたが、200年前の貴族内革命以降、貴族連盟による連帯合議制の貴族制政治が執られている。国家元首たる王は存在しないが、連盟に加盟する貴族が持ち回りで代表を勤めている。
貴族連盟による大陸統治は、彼らが掲げる王立治安構想に基づいて中央集権的に執行されているが、トトカンタやアーバンラマのような自治性の高い都市では各市の市議会によって地方行政が賄われ、それよりも小規模の町村などでは、中央から派遣される管理官によって治安が監督されている。
人間種族が立ち入ることのできないフェンリルの森と、地人種族の独立自治領となっているマスマテュリアに関しては、貴族連盟の統治計画からは除外されている。また、純血の人間だけが入都を許されるキムラック市も実質上、キムラック教会による治外法権が黙認されている。
種族[編集]
民族[編集]
現在、大陸で最も繁栄している生物は人間種族であり、その棲息地域は大陸の未踏地域を除いた大部分に分布している。かつてはドラゴン種族(主にウィールド・ドラゴン種族=天人種族)による大陸の統治が行なわれてきたが、天人は歴史の表舞台から姿を消して以降、その後継者を名乗って台頭を始めた人間種族の貴族階級が統治権を引き継いでいる。ドラゴン種族は(絶滅した天人を除き)フェンリルの森の最深部に位置するドラゴン種族の聖域に隠遁している。
ドラゴン種族よりもさらに古い大陸の原住民族である地人種族は、ドラゴン種族の入植に伴って南端のマスマテュリア地方に追いやられ、現在もそこに自治領を形成し、独自の文化と生活を築いている。
言語[編集]
公用語は大陸新語。マスマテュリアでは地人語も使われている。かつては天人の言語である大陸古語が使われていたが、口語化に伴って廃止された。
宗教[編集]
運命の三女神を信奉するキムラック教が最もメジャーな宗教で、貴族連盟により国教の指定を受けている。
関連項目[編集]
脚注[編集]
- ^ キエサルヒマ大陸の全体図が最初に公開されたのは『月刊ドラゴンマガジン』1996年12月号である。その後、さらに精細に描かれた地図が『魔術士オーフェンはぐれ旅DX』(1998年9月発売)に掲載された。いずれもドラゴンマガジン編集部が独自に製作したものであり、後の原作の記述と食い違う部分も存在する。
- ^ 『エンサイクロペディア魔術士オーフェン』 p.74
- ^ 『月刊ドラゴンマガジン』2000年3月号 (トトカンタとアーバンラマを結ぶ航路が蒸気船で1週間という説明より、船の航行速度を10ノットと仮定すると、大陸半周が約3360キロメートル、1周が約6720キロメートルと算出される)
- ^ 『月刊ドラゴンマガジン』1999年9月号
- ^ 『魔術士オーフェンはぐれ旅 約束の地で』あとがき